「お母さん、ぼくプラモデルが作りたい!」

思えばこれが始まりだったかもしれない。
時に1995年夏。息子(兄)が小学1年生の時である。

もともと何かを組み立てるのが好きな子だった。だが1年生に本物のプラモデルはまだ難しすぎる。そんな時、夫がふと思い出して言った。
「子どもでも組み立てられる接着剤を使わないプラモデルがあるらしいぞ!」
さっそくおもちゃ屋に買いに行く。そこで小さな車のプラモデルを買った。それがミニ四駆という名前だと知ったのは、買ったあとのことである。

それからが大変だった。この小さなおもちゃは息子の心をあっという間に夢中にさせた。息子だけでなく、夫までもが夢中になった。もっと種類がほしいと、田宮模型が出しているミニ四駆のカタログを手に入れた。パーツを変えればグレードアップできると知った夫はミニ四駆の情報を探し歩いた。あるおもちゃ屋で「小学館のコロコロコミック」に詳しい情報が載っていると聞き出して、さっそく購入。そこに連載していたのが、こしたてつひろ氏の「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」だったのである。

これがなかなか面白い。絵柄もどちらかというと私の好みだ。しかしこの時点ではまだ私は「夢中」というところまではいっていなかった。だが、息子は夢中になった。あの本読みの苦手な子が! レッツ&ゴーなら読むんだ! 1年生も後半になり、このままではまずいと危機感を感じていた私は、「国語の勉強」のためにレッツ&ゴーを全巻揃えてあげた。この時点で夫は既に大神博士のファンであった。

晩秋。
「おい、レッツ&ゴーをテレビでやるぞ!」
興奮した夫が言う。
「子どもも見たがっているし、ぼくも見たい。第1話から録画してあげなさい」
「ええ、そんなのを~? 下手に録画したら子どもたち、1日中そればっかり見てるわよ。ダイレンジャーやカクレンジャーで懲りたでしょう?」
渋る私に夫は食い下がる。しぶしぶ承知。
「分かった。3倍モードでいいわね?」
「駄目だ! 子ども向きのものこそ質のいい録画状態でなきゃいけない。標準でとりなさい」
夫におしまくられ、もったいないと思いつつ、テープを用意する。しかし今思えばこれが運命の分かれ道だったかもしれない…。 

そして明けて正月、1996年1月8日。今、運命の扉が開かれようとしている…。


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