原作とアニメの違いとは…


★レビューと考察★


「はじめに…」
前頁の一覧からも分かる通り、レツゴーは原作とアニメではかなり展開に違いのある作品です。 アニメが原作にほぼ忠実に作られていたのは4巻くらいまでで、その後はほとんどパラレルワールド状態。終わり方も違う。 いったいどうしてこんなことになってしまったのか? 途中でアニメが原作に追いついてしまったのは事実ですが、それにしても…。ここではその整理も兼ねて、アニメと比較検討しながらのレビュー・考察を行ってみたいと思います。

「SGJC編…じゃなかったっけ?~1-9巻考~
息子のためにミニ四駆の情報を得る目的で購入したコロコロコミック。それがレツゴーとの最初の出会いでした。どうせ子どもの読む漫画…と思って見たら、これが面白い!  レッツゴー兄弟の魅力! GJCでのライバルとの熱き戦い! 大神軍団との迫力あるバトル! そしてついに迎えた最終決戦は大神研究所の火山基地……あれ? なんか変だぞ? SGJCはどこへいったんだっけ…??
実は原作にはスーパーグレートジャパンカップというのは存在しません。原作にあるのはグレートジャパンカップです。 それも途中で消えてます。シーズンレースでの3位入賞者が年1回開催されるスーパーグレートジャパンカップに出場できる…というのは実はアニメだけの設定。だから原作では「最後に日本1になる」という構成にはなっていないんですね。

アニメではライバルとのバトルも大神博士との対決も全てSGJCという大きな流れの中で展開していきます。1話を見て下さい。実は烈と豪のゴールシーン以外にも原作との大きな違いがあることに気付かれたでしょうか。ウインターレース。原作にはそんな言葉はどこにもありません。つまりアニメでは1話の時点から既にSGJCへの布石は張られていたことになります。アニメが原作においついたからストーリーが変わったんじゃない。違いは既に1話から始まっていたのです。

アミノ監督は原作のエピソードを使ってレツゴーを別の物語に作りかえていたんですね。これが動画王に書かれていた原作を解体し再構成したということなのだろうと思います。更にアミノ監督はここにアニメ独自のテーマを盛り込み、非常に完成度の高い作品としてレツゴーを生まれ変わらせました。つまり、アニメSGJC編は最初から原作とは別物だったんですね。

「WGP編…リーダーは誰?~10-13巻考~
WGP開幕! 世界の強豪と勝負して優勝を目指せ! 敵はアメリカのアストロレンジャーズ、イタリアのロッソストラーダ、ドイツのアイゼンヴォルフ。迎え撃つは我らが日本代表チーム、TRFビクトリーズ。リーダーの…ん? リーダーは…日本チームにリーダーはおらんかえ~。
実は原作にはリーダーはいません(ブレットやカルロは「リーダー」と呼ばれているのでリーダー制度はあるようですが…)。これでは烈くんの立場が根本から無いではないですか~。描写もほとんど豪中心。しかも兄貴、サポート役どころか、引き立て役になりさがっておりまする…(泣)。アニメ85話は解釈のしようによっては救いがあるけど、原作(12巻)ではその余地すらありません…。これでは原作WGPは豪くん物語~。

アニメの放送延長を受けてスタートしたのがWGP。この辺りになると、もはや原作もアニメも同時進行で企画が進められていったと思われます。月1回40頁前後のコロコロコミックと週1回30分のアニメではベース配分が違いすぎるし、アニメには前作からの設定を生かさねばならないという事情もある…。そのため、エピソードを部分的に共有しただけで、原作もアニメも物語としては最初から別々に展開したようです。結局、原作がまともに描くことができたレースは3つだけ…。このような状況下では豪を描くだけで精一杯だったのはしかたがないことだったと思われます。 また、ジャパンカップの先行販売マシン(マグナム)を優先して描かなければならない「大人の事情」もあったでしょうし。

原作はMAX準備のためWGPとしては完結できませんでしたが、豪の物語としてならそれなりに結実したので、豪派なら十分に楽しめると思います。ただ、烈派はアニメを見ろ。としか言いようのないところは辛いですが…(いや、烈だけでなく、豪以外のキャラファンは全員アニメ派にならざるを得ないかもしれない…^^;)。

「まとめ~原作とアニメは別の作品~
原作レツゴーは子ども向けとしてなら十分な魅力と面白さを持っている作品だと思います。 特に難しいテーマもなく、キャラの魅力で読ませるタイプの典型的な少年漫画。確かにツッコミどころは満載(笑)ではありますが、その点はアニメも同じだし、むしろ豪ファンなら原作は読んでおくべきでしょう。

しかし検証してみたように、原作とアニメは同じキャラを使いながら作品としては別物として描かれていたわけですね。その結果、最終的なテーマも違ってきています。だから中途半端にアニメを見て原作で補おうとするとかえって分かりにくくなってしまいます。アニメを見るのなら、1話から順を追って最後まで全話通して見てほしい。特にアミノ版。そのストーリーの奥に潜んでいる本当の凄さに是非とも気付いてほしいと思います。

ところで、比較一覧表を見ると、単行本には本編の他に番外編がかなりたくさん収録されていることに気付きます。実はこの番外編がけっこう面白い。割り切って楽しむのもいいものです。


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