放映時は92話からまだ心が立ち直ってない状態で見たため複雑な思いもあったが、Jにとっては大事な回である。
Jがバトルレーサーだった過去から完全な決別を果たした回。ビクトリーズのメンバーになり、Jの中からはバトル時代のことはすっかり消え去っているように感じていたが、ここに思わぬ伏兵が現れる。大神時代の仲間、レイである。レイの本当の目的は(レイから見れば)裏切り者のカイだったのだろう。「甘いレース」をやってるカイに「勝利が全て」を叩きつけるために、Jにシャークシステムを渡す。烈くんのために勝たねばと追いつめられていたJの心の隙がそれを受け入れてしまう。
だがバトルを嫌う烈がバトルでもぎ取った勝利を喜ぶだろうか? 「烈兄貴だってそんな真似して勝ってほしいなんて思ってねえよ」豪の説得にバトルレーサーに戻っていた自分に気付き、我に返るJ。「こんなものはぼくたちには必要ないよね」と言ってシャークシステムをはずして大きく放り投げる。Jが心の奥底に残っていた「一瞬でもバトルに頼ってしまった自分」を投げ捨てて、真に正しいミニ四レーサーとして生まれ変わった瞬間だ。
ところで。実は放映時、私にはこのシーンが何故か33話の烈くんに見えてしまい、「何でここでJが烈になるの!?」と思ってしまった。自分の心が平静でなかったからこんな変な感じ方をしたのだろうと思っていたが、レツゴーを最後まで見た後ではあながち的外れでもなかったのでは?という気持ちになっている。
後にJは100話で烈・藤吉と共にカルロを追随する。しかしバトルレーサーの心が一片でも残っていてはカルロに「勝つことより大切なことがある」を伝えるために走るメンバーとしては説得力が足りない。そのためにJはバトルを完全に否定できる人間になる必要があったのではないかと。それが成し遂げられた証がシャークシステムのドルフィンエフェクトへの変化ではなかったろうか。
Jメインの回ではあるが、この回が伝えているのはそれだけでない。前回から始まった「ビクトリーズ内の新たな動き」がここでも続いている。リョウの台詞に注目。
「烈、優勝決定戦までには怪我を治しておけよ」
「勝って烈と一緒にファイナルステージへ行く」
リョウがこんなことを言うのは初めて聞いた気がする。Jが勝とうとしたのも自分のためではない。
「きっと勝って烈くんにもう1度レースで活躍してもらうから」
誰もが烈のために勝とうとしている。烈のために道を開こうとしている。今の皆はWGPの優勝でもトップでゴールすることでもレースに勝つためでもなく、烈に道を開くために走っているのだ――。何処かで見たシーン。63話のシルバーフォックス。ユーリのために道を開こうとしていたメンバー。そう、ビクトリーズの皆も気がついたのだと思う。バラバラだったビクトリーズをまとめてここまで引っ張ってきてくれたのは誰だったのかを。自分よりもチームを優先して努力してきたのは誰だったのかを。だから今度は自分たちが烈を走らせてあげる番。烈に走ってもらいたい──その気持ちがメンバーの心を1つにする。そこにビクトリーズを真に1つにする「本当の答」がある──。