[特集:爆走兄弟レッツ&ゴー!!]
-47~51頁-
連載を始めるときに、こした先生とテーマについて話し合ったんですが、その一つが『兄弟』だったんです。子どもの数が年々減っていて、兄弟の数も昔に比べれば圧倒的に減少してますよね。(中略)だからまんがのなかでミニ四駆を題材に、兄弟なんだけどライバル、という関係を描いてみようということになったんです。やんちゃな弟としっかり者の兄貴という基本的なパターンなんだけど、実はそれって今の子どもたちにはそれほどありふれたことじゃないんじゃないかなと。
初期に考えたことは『この車はかっこいい→だから速いんだ!』というイメージ作りをしようということですね。(中略)だから現実にはありえないことも、作中にはたくさんありますよ。(中略)実際に子どもたちが体験している以上のヴィジョンというか、夢を見せてあげられないと「レッツ&ゴー!!」の作品の魅力って弱まっていっちゃうと思うんです。
~ぱふ1997年6月号49頁
コロコロ編集部:佐上氏のインタビューより引用 ~
< 掲載内容 >
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漫画情報誌という性格ゆえか、アニメではなく原作漫画に主眼がおかれた特集になっているのが大きな特徴。だからインタビューもアニメ監督ではなく、コロコロコミックの担当編集者になっています。私はアニメ版のファンなのですが、アニメの基礎は原作にありきで、その原作の誕生秘話を見ることで、レツゴーの原点がよく分かります。
【兄弟】
冒頭の引用に注目。子どもの数が減っている──確かにその通りで、男の子の兄弟自体が少なくなってきています。子どもは2人で姉と弟か、兄と妹…というパターンが実際には多い。うちのような2人とも男の子というのは珍しいくらいで、次男が貴重がられるこの頃。男の兄弟がいない男の子に向けて漫画の中で兄弟の体験を…という意味もあったようです。ただ残念なのは、原作漫画では人気が出過ぎたゆえか、後半(特にWGP)はレース主体の方へシフトせざるを得なかった感じがありました。その分アニメでは弟だけでなく兄の心理にまで十分なスポットを当てて描いてくれ、初期の原点を最後まで守ってくれた気がします。
【子どもの夢】
編集者の目から見た児童漫画を描く際の押さえどころがよく分かるインタビューでもあります。子どもの夢──「こんなことが出来たらいいな」の疑似体験。マグナムトルネードもそれです。あまりに描きすぎていくと(リアルになりすぎると)物語に膨らみがなくなる──すなわち夢の入る場所がなくなってしまうと。大切なのは「子どもが望む夢」を見せてあげられることなんですね。そこを外すと対象年齢がよく分からない中途半端な作品になったり、大人の理想を啓蒙(あるいは押しつけ)するような作品になってしまうようです。そのポリシーはアニメにも反映されています(特にアミノ監督版)。
【ミニ四駆について】
ミニ四駆について興味深いことが語られています。ダッシュ四駆郎で第1次ミニ四駆ブームが起きたのですが、スピードを競っていくうちに次第に全体のレベルが高くなり、小さな子どもがついてこれなくなってきたと。そのうちダッシュ四駆郎も終わり、ミニ四駆の人気も下降して…。しかしある時期、年齢層ががらっと入れかわり、再び火が付きだしたそうです。走る車(タイヤがついているのがポイント)は男の子の永遠のアイテムなので、タミヤには細々でもミニ四駆の販売を続けてほしいものです。
この他、インタビューからは女性ファンがいることに関しては制作者側は「意外」と受け止めていたことも分かります。ミニ四駆のイベントに中学生以上の女子ファンが来ることも多かったらしいですが、主役はあくまでも小学生の男の子であると。これはアニメ版でも忘れてはいけない大事なポイントだと思います。
ところで、ぱふの読者コーナーには私と同じく「息子に付き合っているうちにハメられた」お母さん方がけっこうおられるのが嬉しいです。ぱふの購買層の幅広さ(少女時代からの漫画ファンが親になっても購読を続けている?)がこういう層の声も拾ってくれたんですね。アニメージュやアニメディアとはまた少し違う視点からレツゴーを見ているぱふ。いろいろな雑誌の取り上げ方や反応を知ることにより、作品の評価のされ方の全体像も見えてくるかと思います。